大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)3871号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕成立に争いがない甲第六号証によれば、東京弁護士会の昭和三九年一月一日施行の弁護士報酬規定に『依頼者が受任者の責によらない事由で解任し、あるいは無断で取下、放棄認諾、和解等をなし事件を終了せしめ又は委任事務の遂行を不能ならしめたときは成功と看倣し謝金の金額を請求することができる。』と規定されていることが認められる。

ところで、委任は当事者間の信頼を基礎とするもので『何時ニテモ之ヲ解除スルコトヲ得』るものであるから、弁護士に訴訟事件を委任する場合のように弁護士その人の人格的な信頼を基礎とする色彩を帯びるものについては、ことに、仮に弁護士に職務を行なうことに不履行がなかつたとしても、委任関係を終了させることが当事者間の普通の意思に適するものであることに徴すると、一定の場合に訴訟事件の処理が成功したものとして報酬を請求することができるとする右の規定は、委任者のいたずらな恣意によつて翻弄されることに対する制裁規定であるから、条件の成就によつて利益を受けた者に、条件が不成就となつた一定の場合に、条件が成就したものとみなす権利を認めている民法第一三〇条の解釈として、妨害によつて不成就となつたこと、いいかえれば、妨害がなければ成就したであろうと認められる場合でなければならないことが要件とされていることからいつても、訴訟のどの段階で解任がなされてもこれを問わないものとするならば、とくにそのことを明らかにして契約を締結しなければならないものと解するのを相当とする。

そこで、そのことを明らかにしていない本件においては、すくなくとも事件の成功を一応疎明するに足りる程度の段階で解任がなされた場合でなければその支払を請求することができないものと解せられる。

しかし、被告が原告を解任したときに、その事件の成功の蓋然性を一応疎明するにり足る程度の段階であつたことについてはこれを認めるに足りる証拠はない。

してみると、その点で、原告の被告に対する調金の請求は理由がないものといわなければならない。(武田平次郎)

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